平成12年11月20日

 

塩酸フェニルプロパノールアミン含有医薬品の
適正使用について

 

1.経緯

(1) 塩酸フェニルプロパノールアミン(PPA)服用と出血性脳卒中との発生リスクに関する大規模疫学調査が米国において実施され(19941999年)、その関連性について、女性が食欲抑制剤として服用した場合に有意に高いとの結果が得られた。これを受けて、米国食品医薬品庁は、「PPAが出血性脳卒中のリスクを増大させる」として、11月3日、製薬企業に対し、PPAを含有する医薬品の米国内における自主的な販売中止を要請した。

(2) 厚生省では、この疫学調査の報告書を入手し、専門家の意見を聴く等、我が国におけるPPA含有医薬品の安全性について検討してきた。

 

(参考)塩酸フェニルプロパノールアミン(PPA)

1.米国において鼻炎用内服剤、鎮咳去痰用剤及び感冒用剤のほか、食欲抑制剤としても使用されてきた。成人の1日最大服用量は150mg/日である。

2.我が国では、一般用医薬品としては鼻炎用内服剤、鎮咳去痰用剤及び感冒用剤に、医療用医薬品としては上気道炎治療剤に配合されている。成人の1日最大服用量は100mg/日(鎮咳去痰用剤では90mg/日)である。

 

2.検討結果

これまでの検討の結果、次の理由から、我が国において鼻炎用内服剤等として使用されているPPA含有医薬品(主要な製品は別紙の通り。)を直ちに販売中止とすることは必要ないものの、米国の研究において、服用量が多い場合に出血性脳卒中の発生リスクが高まる傾向が示されていることを踏まえ、定められた用法・用量に従い、過量服用をしないこと等を徹底することとした。

1) 米国の研究において、PPA含有医薬品服用後の出血性脳卒中の発現は、食欲抑制剤として服用された場合に高い関連性が認められたが、我が国ではPPA含有医薬品は食欲抑制剤として承認されておらず、また食欲抑制の目的で使用されている実態もないこと

2) 我が国における1日最大服用量は、米国より低く定められていること

3.今回の対応

 (1) 本日、PPA含有医薬品を製造、販売する関係企業に対し、医師の指示が不要な一般用医薬品と医師の指示が必要な医療用医薬品の違いに応じ、次の内容を指示した。

1) 以下の使用上の注意の改訂により適正使用の徹底を行うこと

[一般用医薬品の場合]

ア.次の診断を受けた人は服用しないこと

高血圧、心臓病、甲状腺機能障害

イ.脳出血を起こしたことがある人は服用しないこと

ウ.過量服用しないこと

エ.モノアミン酸化酵素阻害剤(塩酸セレギリン等)で治療を受けている人は医師又は薬剤師に相談すること

オ.まれに重篤な症状として脳出血が起こるおそれがあること

[医療用医薬品の場合]

ア.禁忌

高血圧症の患者

脳出血の既往歴のある患者

イ.重大な副作用

脳出血があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと

ウ.過量投与

外国において、過量投与により脳出血の危険性が高くなるおそれがあるとの報告がある

2) 統一的な注意喚起文書を薬局・薬店等に配布し、併せてPPA含有医薬品(一般用医薬品)の使用上の注意を消費者に伝え、服薬指導等を徹底する旨を薬局・薬店等に依頼すること。

(2) 厚生省では、日本薬剤師会に対しこうした措置を行った旨を通知し、必要な要請を行った。